ハムスター通信 / 14歳のトマス・ピンチョンによる
ハムスター高(Hamster High)は、[ロング・アイランドの]南岸沖半マイルほどのところに突き出た岩の上にある。その岩は岩としてもあまり大きくない。満ち潮のときに訪ねてきた人に聞いてみれば、みんなそう言うだろう。なぜハムスター高というか、誰も知らない。創立者のJ・ファティントン・ウッドグラウズ(J. Fattington Woodgrouse)が、そのチョロチョロした小動物に強い愛着を持っていたという説があるけれど、これもただの噂だ。そのJ・ファティントン・ウッドグラウズの銅像が学校の前に立っている。最後の火星人(The Lat Martian/この年ヴァーゴ・スタッテンが出したパルプSFへの言及かと思われる)と腹を空かせたバラクーダを足して2で割ったみたいな、つるっぱげで腹のつきでた小男だよ。去年のハロウィンのとき誰かがこの銅像に、派手なオレンジ色のペンキで卑猥な言葉を書きなぐった。それがすごいスキャンダルになって、僕は4週間の停学になったよ。
他の世界からだいぶ隔絶されていることがたぶん原因なんだろう、ハムスター高は──クレイジーっていうのとは違うんだけど──ちょっとばかり奇妙[odd]なところがある。たとえば僕らの三角関数の教師[アメリカの高校では、代数、幾何、三角関数、数学解析、微積など、それぞれ独立した課目を選択する]にファッジャドゥッジ先生というのがいて、これがシャルトルーズ色の瓶底眼鏡をかけた青年教師なんだけど、ペグ・パンツをはいて、クールなカーディガンを着てバップのベレーを被ってる。ベビー・ブルーの車長の長い改造セダンを乗り回して、クラスではいつもバップなジョークを連発している。いや、どこかがオカシイわけじゃない。以前バップのドラマーをやっていて、バードランドやエディ・コンドンで一緒にやっていた仲間のところへ戻りたがっているだけなんだ。ときどき独りでぶつぶつ言っている。ヘロインをやっているという噂もある。ほんと、ブッとんでる[gone]んだ。
(これはピンチョンがニューヨーク州オイスター・ベイ高校の学校新聞 Purple and Gold に何度か寄稿した「The Voice of the Hamster」の連載第一回の一部です。原文はこちら)
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