世界初のチンパンジーによるロケットの弾道飛行
1961年1月31日。「ハム」君を乗せたレッドストーン・ロケットは、無事打ち上がったものの、意外な展開を見せることになった。エンジンが燃料を予想以上に早く使い切ったために、搭載コンピューターは「エンジン以上の可能性あり」と判断し、マーキュリー・カプセルのすぐ下に装備されている脱出用タワー・ロケットに点火し、カプセルをロケットから切り離した。このため、「ハム」君のテストの基準となる軌道がくるった上、まずいことにカプセルの電気系統にも若干の故障が重なって、「ライトの瞬き方に応じてバナナを支給するシステム」は大混乱に陥った。飛行中に受ける最大化速度は8Gくらいと予想されていたが、実際には16Gくらいかかり、「ハム」君は常に正しく左右のバーを押し続けたにもかかわらず、バナナの丸薬はもらえず、電気ショックばかりを見舞われるという悲惨なことになったのである。
『月をめざした二人の科学者』より